衛星で探せ ヘビースモーカーズフォレスト -ドラえもん のび太の大魔境から-
ヘビースモーカーズフォレストとは?
「ドラえもん のび太の大魔境」という映画をご存じでしょうか?1982年に公開され、2014年にもリメイク版が公開された人気作品です。
この映画では、ドラえもん達は衛星を使って冒険先を探します。場所は中部アフリカのジャングルの奥。そこで犬の顔をした巨神像を見つけます。この場所は「ヘビースモーカーズフォレスト(タバコ好きの森)」と呼ばれており、いつも雲で覆われているため衛星では観測できない場所でした。ドラえもんの衛星は雲に関係なく地表を観測できるので(SARセンサを搭載していたと思われます)、現代の技術では見つけられなかった巨神像を発見することができました。
この場所をLandsatで特定したいと思います。
余談ですが、ドラえもんは衛星画像3km2の範囲を1枚の紙に印刷し、約930万枚の画像を目視判読していきます。AIが発達してネコ型ロボットまで開発された未来でも、目視判読の重要性は変わらないようです。
光学画像で雲の多い地域を推定
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ドラえもんによれば、巨神像は「中部アフリカのジャングルの奥」で発見されました。「中部アフリカ(=Middle Africa)」は国連の定義によれば赤道付近の9カ国で、カメルーン、ガボン、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、赤道ギニアなどが含まれます。この地域にはサバンナも含まれますが、「ジャングルの奥」で発見されたので、熱帯雨林を対象にいつも雲で覆われている場所を探すことにします。
まず、直近の2021年の1年間を対象として、Landsat8号が取得したデータをVEGAで可視化します。Landsat8号は16日周期で地球を観測しているので、1年間で22回から23回アフリカを観測していることになります。取得された全画像の反射率の平均値を取って画像にしたものが図1です。場所がわかるように画像を透過させて下の地図も表示させています。
Landsatのような光学衛星の場合、雲があると画像は真っ白(=反射率が高い)になりますが、平均値でも白く見えるということは、年間を通じて雲が多かったということです。図1を見ると、ほとんどの地域で雲が多かったことがわかります。とは言え、晴天時に地表の様子も観測されていますので、次は雲の無い画像を合成してみましょう。
雲無画像で絞り込み
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雲が無い画像の場合、地表は植生の緑や水域の青など、雲が写った白い画像に比べて反射率は低くなります。VEGAでは反射率の最小値を選ぶことができるので、先ほどと同じ範囲、同じ期間の最小値で雲無し画像を合成します(図2)。
最小値をとれば、たとえ22回観測して全て雲の画像だったとしても、23回目で雲の無い画像が取れたのなら雲無し画像になります。逆に、図2でも白く写っている部分は、2021年の期間で1度も雲の無い画像が取れていない、つまり「いつも雲で覆われている場所」ということになります。
ヘビースモーカーズフォレストを特定!
図2で白く写っている部分は、画像の左側に3ヶ所確認できます。そのうち1つは海域なので無視して良いでしょう。残りの2ヶ所のどちらかがヘビースモーカーズフォレストであると思われるので、この部分を拡大してみましょう(図3)。
北側のAは、ガボンの首都リーブルビルから東に約100kmのあたり。南側のBは、コンゴ共和国西部でガボンとの国境付近で両国にまたがっています。
この2つを比べると、以下のような特徴があります。
A: 面積は狭く、濃い白
B: 面積は広く、薄い白
劇中でヘビースモーカーズフォレストの面積は言及されていないのですが、それほど広くなくとも厚い雲で覆われている方が、映画のイメージに合っていると思います。また、Bは熱帯雨林だけでなくサバンナも含まれているようです。従って2021年のLandsatの画像からは、Aの地域がヘビースモーカーズフォレストであると言えます。
ドラえもん達の冒険ルート
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Aの地域を更に拡大したものが図4になります。
「ラララ(Lalara)」という可愛い名前の街(村?)の南側20kmくらいのところにヘビースモーカーズフォレストがあります。人里から20kmというのは、映画のイメージよりだいぶ近いと思いますが、そこは目をつむります。おそらく人間との小規模な接触はあったのかもしれません。
映画では、ドラえもん達はヘビースモーカーズフォレストの100km手前から冒険を始めます。Aの地域は北側20kmにはLalaraがあり、東や南にも幹線道路が通っています。従って、ドラえもん達は北西から東進するルートでヘビースモーカーズフォレストに向かったと思われます。
もう1つの可能性
中部アフリカで最大の面積を誇るコンゴ民主共和国など、この地域で多くの人が話している言語はリンガラ語です。映画でドラえもん達が向かった場所は犬の王国だったのですが、リンガラ語で犬は「Mbwa」と言います。そしてコンゴ民主共和国には「Mbwa」という名前の街(村?)があるのです。
残念ながら、今回の調査ではこの場所をヘビースモーカーズフォレストと判断することはできませんでしたが、何らかの関係はあるのかもしれません。